吉野 真紀子
伝統美養塾 食卓和文化継承士
美養ライフスタイリスト
一般社団法人 伝統美養食育推進支援協会 理事
朝、包丁とまな板の音で目覚め、味噌汁の匂いが家中に広がる…
一昔前、日本の一般家庭はどこの家もそんな暮らしをしていたかと思います。我が家もずっと母の手作り味噌を食べていました。母の死後、しばらく市販の味噌を使っていましたが、先に味噌作りを始めていた娘夫婦の勧めで味噌作りを開始。毎年味噌を作っています。
昭和から平成、令和、と時代は変わり、私たちの暮らし方も食生活も大きく変わりました。
私が関わっている音楽の世界も、世代を超えてみんなで歌える歌はほとんどなくなってしまいました。特に今年は新型コロナウイルスの影響で、歌自体がやってはいけないものになってしまいました。
先人たちが子供の心を育むために力を注いだ日本の唱歌、童謡を次世代に繋げていきたい、
そんな思いから参加した「童謡学会」で偶然、隣に居合わせた方が毛利涼子さんでした。
そこでの出会いから急展開。
東日本大震災の直後から、私はコンサートで募金を集め、翌年から塗り絵式の「唱歌・童謡歌集」を3,000部自主製作。避難先の仮設住宅などで無料配布しながら「一緒に歌いませんか⁈ 歌いましょう!」と呼びかけ、歌の会を30数ヶ所で開かせていただきました。
同じ頃、毛利さんは手作り味噌を作り、いざ東北に届けようとしたところ「不衛生だから」という理由で受け入れてもらえなかったと知り、もの凄いショックを受けました。
震災直後の現場で、配給されたおにぎり一つのために本人が長時間並んで受け取らなければならない状況下、「寒い中、こんな冷たいものを食べるために並ぶくらいならもういらない」と高齢の親に嘆かれて困ったという話を聞いていたからです。その時にお椀一杯、温かい味噌汁があったら…、それも手作りの美味しい、心のこもった味噌で作った味噌汁だったら…。
そんな二人が意気投合した瞬間でした。
今年3月、新型コロナウイルスによる突然の自粛要請で音楽活動が全てなくなった私は、時間ができたことをチャンスと捉え、協会の講座を受けることにしました。改めて知る「和食の力」には眼から鱗でした。「人間の体は食べ物でできている」まさにその通りです。
今、その「和食」が危機的状況にあるというのは大変なことです。
私が長年コンサート、講座等を続けてきた唱歌や童謡には四季折々の風景、行事や祭事、物語などを歌にしたものが数多くあります。残念なことに今や唱歌・童謡は大人の郷愁を誘うものになりつつあり、主役であるはずの子供たちに伝わっていないのが現状です。
和食も唱歌・童謡も無くなってしまってから取り戻すことは容易ではありません。
今年、この協会と、ここに所属している方達との出会いは私にとって大きな刺激となりました。
これからは「健康」をテーマに和食、日本の歌、そして声を出すことの大切さをちゃんと伝わるように生き方、過ごし方、暮らし方をしていきたいと思っています。
・声楽家藤原歌劇団団員